命を守る迅速な体制へ:川崎市救急搬送時間短縮対策視察報告

救急車の現場到着時間が延伸し、市民の命が危険にさらされている現状は、千葉市においても深刻な課題です。この課題解決の糸口を探るため、救急需要の高い時間帯に特化した隊の運用や先進的なデジタル技術を活用している川崎市の取り組みを視察しました。
1. 川崎市における先進的な取り組み
川崎市が現場到着時間の短縮を実現するために複合的に展開している施策のうち、特に重要性の高かった三点について報告します。
(1) デイタイム救急隊によるリソース集中
川崎市では、救急要請が夜間の約1.8倍に集中する日中の時間帯(8時30分〜17時15分)に特化して活動する「デイタイム救急隊」を導入しています。これは、24時間隊の増設よりも効率的かつ財政的な合理性を保ちながら、最も需要の逼迫する時間帯に集中的にリソースを投下する戦略です。その結果、運用エリアでは平均現場到着時間が前年比で約1分短縮されるという具体的な効果を上げており、リソース配置の最適化モデルとして高く評価できます。

(2) ICT活用による病院連携と「断らない体制」
現場到着時間の短縮と並行して重要なのは、搬送先が決まらず現場滞在時間が延伸する「たらい回し」を防ぐことです。川崎市では、ICTを活用した病院前情報共有システムを導入し、救急隊と医療機関が患者情報や空き状況を迅速に共有する体制を構築しています。これにより、病院選定の迅速化と、地域の医療機関と協定を結んだ「断らない体制」の維持に貢献し、病院収容までの時間短縮に成功しています。
(3) AIによる救急需要の予測と機動的運用
さらに先進的な取り組みとして、AI技術を駆使した救急需要の超短期予測が進められています。過去の出動データに加えて、気象情報やイベント情報などを統合分析することで、数時間後の出動要請の集中を予測します。この予測に基づき、デイタイム救急隊を含む各隊を需要発生前のエリアに再配置する「プレホスピタル・リロケーション」を機動的に実施しており、指令段階で既に到着時間を最小化する努力が払われています。
2. 私の感想
市民の命と安全を守る公的責任を果たすべく、知恵を絞り、デジタル技術を積極的に活用する川崎市の姿勢は評価に値します。特に、リソースが限られる中で、最も人命に関わるピーク時間帯に焦点を当てたデイタイム隊の運用は、現行制度下での最善策の一つと言えます。
しかし、救急搬送が困難になっている根本原因は、国による公立・公的病院の削減政策と、それによる救急隊員(公務員)の恒常的な不足にあると認識しています。
よって、こうした先進的な施策と並行し、公的医療体制の強化を国に求めるとともに、市民の安全を守る隊員の恒常的な増員と労働条件の改善を行政として強く推進していくことが、持続可能な救急体制の確立に不可欠であると考えます。
3. 千葉市への具体的な提言
今回の視察結果を踏まえ、千葉市、特に中央区の救急体制強化に向けて以下の二点を緊急に提言します。
- デイタイム救急隊の試行導入: 中央区は高齢化に加え、商業・観光施設が集中し日中の人口動態が激しい地域です。川崎市の成功例を参考に、まずは中央消防署を拠点としたデイタイム救急隊の試行導入を早急に検討し、現場到着時間の改善効果を検証すべきです。
- AI・ICTシステムの緊急導入: 隊員のマンパワーだけに頼るのではなく、AIによる救急需要予測システムと、病院間の情報共有を促すICT連携システムを導入し、リソースの最適な配置と迅速な病院受け入れ体制をデジタル技術で担保することを求めます。